本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「あれ程、電話しろって言っただろ!あんたの事だから変な気を使ったのかもしれないが一大事になってたらどうするつもりだったんだ?」

エレベーターに乗るまでは三人で無言だったが、乗った瞬間に高見沢さんに怒鳴られる。

「……高見沢、説教なら後から俺がする。お前はもう、休んでいいぞ。遅くまでお疲れ様」

「はぁい。一颯君の命令なら仕方ないよね!」

エレベーターを降りる時、「篠宮は荷物をまとめて帰る準備をしなさい。送って行くから」と一颯さんに言われて、「大丈夫です。穂坂様のお見送りもしたいですし…」と返答したら、「いいから早く準備しろ!制服も帰らないと予備がないんだろ?」と強く言われた。

「ブラウスはあります…。ブレザーはボタンつけないと着られな…」と途中まで言いかけたが、ただならぬ黒いオーラが一颯さんから見えたような気がして最後まで言い切るのを止めた。

荷物を手早くまとめて、部屋の消灯などの確認をしてから急いで車に乗り込む。

「……お前は情に流されやすい。バトラーとしての品格を保て」

「品格?」

「情に流されて本来の接客の大元を忘れている。お客様第一主義も良いが、人生相談などは請け負いしなくて結構!余計なお節介とバトラーとしての世話やきは違うだろ!」

「……はい、申し訳ありませんでした」

「分かれば宜しい」

イマイチ分からなけれど…、私の接客は失格だったのかな?確かに穂坂様には近付き過ぎてしまったかもしれない…。

今後は品格を持ち、自己解決しようと思わないようにしよう───……
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