本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
一颯さんの部屋に行くといつもみたいに片付いてなく、ほんの僅かだが散らかっていた。

「珍しいですね、散らかってる……」

「うん、何だか最近は忙しくて。ただ、寝るだけの部屋だった」

テーブルにコンビニの買い物袋を置き、一颯さんがシャワーを浴びている間に片付ける。コートをハンガーにかける為にポケットの中身を確認するとスマホが入っていたので、取り出して買い物袋の横に置いた。見るつもりはなかったのだが…画面上にはアプリのメッセージがあった。

"一颯君、彼女が居ても私はOKだよ。前みたいに遊んで!"
"仕事、忙しい?"
"一颯君が居ないと寂しいよぉ"

思わず、目に止まってしまったメッセージのせいで私の心の中は混乱してる。見てしまった私が悪いのだけれど、一颯さんの秘密を覗いてしまったようで……ザワザワしていて落ち着かない。

ペタリ、と座り込んだ時に一颯さんがシャワーから上がった音がしたので、慌てて「シャワーお借りします」と言って逃げた。

一颯さんは私よりも年上なんだから、過去に色々あって当然だ。受け止められない程、子供じゃない。子供じゃないけど……、私の知らない一颯さんが居るのは嫌だ。

シャワーから上がっても目は合わせられずにいた。

「恵里奈……?もしかしてメッセージ見たのか?」

「……わ、悪気があって見た訳じゃなくて…ス、スーツをハンガーにかけようとしてたまたま…見、」

そっぽを向いていた顔に手を添えて、無理やりに一颯さんの顔の目の前に向かせられた。

「……そうか。せいぜい、中学生にヤキモチ妬いてるんだな」

「中学生?」

「そう。親戚のな。子供の頃は遊んでやってたから今だに懐かれてるだけだ」

呆気にとられた私は、口を結んで膨れる。だって、昔の彼女とかだと思ったんだもん!

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