本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
動揺を隠せない高見沢さんを置き去りにして、私はお客様に頼まれたルームサービスのワインを客室へと運んだ。客室からの帰りに副支配人から「支配人室へ来るように」との電話があり、急ぎ足で向かった。

「お疲れ様、篠宮さん」

「お疲れ様です」

私が入るなり、副支配人は優しく微笑んで声を掛けてくれた。支配人室には一颯さんと副支配人が一緒に居て、他にもう一人、こないだの茶髪の男性も一緒に居た。私が呼び出された理由は一体何なのか、大体の予想はつくけれど。

「仕事中にごめんなさい。支配人から貴方の話を伺って、一度、話がしたかったから呼んだのよ。結婚前提にお付き合いしているって聞いてるわ」

「はい、行く行くは結婚まで辿り着けたら良いなとは思っています」

「お互いに仕事に恋愛に目標達成に励みましょう」

副支配人にガシッと両手を掴まれ、私は苦笑いを浮かべてしまった。一体、何がどうして副支配人は私の味方?になったの?

「恵里奈ちゃん、これからも祥子ちゃんを宜しくね。俺は近くのバーでバイトしてる黒沢 瑠偉(くろさわ るい)と申します。俺がちゃんとした就職先が決まったら、結婚する予定なんだ~」

「そうなんですね、今度、バーに行ってみたいです!私は篠宮 恵里奈と申します。こちらこそよろしくお願い致します!」

「祥子さんはね、バーの常連だよ。仕事帰りとかに飲みに来てる。今度、一緒においで!」

「はい、是非とも伺います!」

副支配人の恋人の黒沢さんも良い人っぽいな。笑顔が素敵。
< 210 / 240 >

この作品をシェア

pagetop