本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「篠宮……?」

遠くで名前を呼ばれた気もするが、ふわふわとした気分のまま、意識が遠のく───……

いつの間にか寝てしまい、少しの間、夢を見ていた。以前の職場のリゾートホテルで支配人と一緒に働いている夢。

従業員は変わってなく、大好きな仲間達がそこには居た。

「………!?」

幸せな夢を見つつ寝返りを打った時、コツンと何かに頭をぶつけて、目が覚める。

うっすらと目を開けると、支配人がすぐ側で寝息を立てて寝ている。寝ぼけている頭での状況判断に時間がかかったが、ベッドの上で支配人に腕枕をされながら寝ていたらしい。

私を運んでくれたのかな?

腕が疲れるだろうと思って、支配人の体制を直そうとすると、捕らわれて深く囲われる形になった。

「……依子?…篠宮?こっちおいで…」

完全に寝ぼけているみたいで、依子ちゃんなのか?私か?を迷いながらも抱きしめられて身動きが取れない。

高鳴っていく鼓動と共に目が覚めた。

支配人は私の心境などおかまいなしに、スヤスヤと眠っている。

一度目が覚めてしまったが、こんな状態では再度眠る事など不可能に近い。

…けれども、抱きしめられているのは心地良くて、ドキドキしながらも前側に回された腕をキュッと掴む。深く眠っていて気付かないから、便乗しても良いよね?

当分眠りにつけそうもないけれど、支配人の寝息を聞きながら再び瞼を閉じた。
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