本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
「お前、本気で言ってるのか?経験値ないにも程があるだろ!
俺が系列ホテルにいるお前を見つけて、指名したんだ。
お前のような純粋バカみたいな女、口説いた事なんかないから、とりあえず近付きたくて、何かやらかす度に呼び付けて…」

取り乱している支配人が面白くて、ついつい笑ってしまう。

「何笑ってんだよ、人が必死に恥を偲んで話してやってるって言うのに!」

支配人は悔しそうに唇を噛み締め、私を睨みつけたが、ほんのりと頬が赤く染まっていたので率直な感想を述べる。

「…だって、いつもと違って可愛いから」

「お前、ふざけんな。もう絶対許さないからな。寝落ちするなよ。嫌だって言っても、帰さないからな!」

「…はぁい」

焦っている支配人の目を見て、ニッコリと微笑む。

毒牙(色気)がない支配人の顔なら、まともに見る事が出来る。

「お前と居ると本当に調子が狂うんだよ…」と溜め息混じりで呟いて、私の肩にコツンと頭を乗せて項垂れた。

シャワーの後で下ろしている前髪が、首筋に触れてくすぐったく、指で無造作に掻き分けるととてもサラサラしていた。

「髪の毛、サラサラですね…」

「…っるさい。…そうだ、同じシャンプーで俺が洗ってやろうか?」

「遠慮します…」

サラサラの髪の毛に触れていると、ここぞとばかりにニヤリとして、私のまとめている髪を解いた。

「シャワー浴びて来い。湯船も溜めて置いたが、ぬるくなってしまったかもしれない。なんなら、追焚きしながら一緒に入るか?」

「………!?それは、嫌です。一人で入ります!」

解いた髪を撫でていたと思っていたら、いきなりトップスの中に手を入れて来たので、手を振りほどき、立ち上がった。

ドキドキドキドキ…。

ビックリした。

形勢逆転してしまいそうになったので、振り切って急ぎ足で浴室に来た。

落ち着け、心臓…。

夜はまだまだ始まったばかりだが、ドキドキは加速度を増すばかり───……
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