本日、総支配人に所有されました。~甘い毒牙からは逃げられない~
次の行先はシーサイド。駐車場に車を停めた後は、ショッピングモールが建ち並ぶ場所へと歩き出した。

「夜は近くのレストランを予約してあるから、この辺で行きたい場所があれば良いんだけど…」

「特にないです!」

「特にないって断言されても、俺が困る…」

「私は一颯さんとお散歩したいです。ちょっと歩きませんか?」

「いいよ。………ほら、手を出して」

「繋いでも……良いの?」

何も言わずに頷き、何も言わずに右手を掴まれる。一颯さんの骨ばった指に私の右手が包まれる。

九月中旬でも残暑厳しく、陽射しも強くいが、どことなく吹いてくる風は少しだけ秋の訪れを感じさせるような気がした。

汗ばんできた手の平を離そうとしても、一颯さんは離してはくれないので…変わらずに握りしめた。

「毎日忙しく働いているから、たまにはこういう風に散歩してみるのも良いもんだな」

「そうですね。景色を見ながらゆっくり過ごすのも癒されますね」

海を眺めながら散歩をして、途中でテイクアウトをしたドリンクを飲みながら歩く。海岸に行って、サンダルの中に砂が入ってしまうのもお構いなしに、手で海水に触れてみたりした。

その後はショッピングモールに戻り、涼みながらのショッピング。上司と部下の関係なんて忘れ去って、純粋に恋人同士の時間を楽しんだ。
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