慈愛のケモノ
弱い心の自分が、『今すぐ来て欲しい』と返信したがる。
ここに来てくれたら、遠月さんの喜ぶ顔が見られて、私も食事に来た意味ができる。
でもそんなことを真希に頼むことは出来ないし、真希だって断ると思う。
「お待たせしました、すみません」
テーブルに戻ると、遠月さんは表情を消して窓の外を見ていた。その横顔の中に、この前一緒に飲んだあの人がいた。
ぱっとこちらを見上げて、笑顔を作る。
「ううん、じゃあ行こうか」
そのテーブルに伝票が見当たらなくて、遠月さんの背中を追いかけると、そのまま店の外に出た。