慈愛のケモノ
店員さんに「ありがとうございましたー」と後ろから声をかけられる。
お会計は既に終わっていたらしい。
「と、遠月さん」
「うん?」
「お金払います」
デザートを食べたんだから明らかに私の方が高い。財布から千円札を二枚出して、遠月さんに差し出す。
立ち止まった遠月さんがそれと私を交互に見て、苦く笑った。
「じゃあ今度何か奢って」
今度、なんてない。
私は今日あなたの連絡先を消そうと思っているのだから。
「受け取ってください……」
「琉花ちゃんさ、分かってる?」
差し出した札ごと、手を握られる。