慈愛のケモノ

やっぱり、全然違う。遠月さんは今日、努めて柔らかい物腰でいただけだ。
私から真希の話を聞きたかったからだろうか。

「俺が今日、琉花ちゃんを誘った理由」

全然笑ってない顔で、その言葉が紡がれる。
怖くて逃げたいけれど、手を掴まれて、それができない。

真希のことを何も話さない私に苛々してるんだろうか。

「わ、分かってます。だからお金、受け取ってください」

奢ってもらって友人を売るつもりはない。私はそれを押し付けるようにすると、遠月さんは少し後退した。

「……手、放して」

未だ掴まれたままの手を見る。

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