慈愛のケモノ
たいぷ。


どんな言い訳を並べても、過去は変わらない。

うちの母は可哀そうな人だったんだと思う。

父がどこか知らない女の元へ行ってしまった後、ずっと酒に浸っていた。
私はそれを見て、慰める言葉も労わる言葉もかけられなかった。

働きもしない、家事もしない、ずっと家にいてリビングのソファーに座ってウィスキーを呷っていた。あれは父の飲んでいたものだ。

ある日、私が家に帰って洗濯物を取り込んでいるところへ、母が来た。
リビング以外に来ることが珍しく、こちらを目を細めて見ていた。

『お母さん、』
『あんたみたいな出来損ないは、誰にも愛されないよ』

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