あなたの名前を呼びたい〜声を失った歌い手〜
「私のオススメはこの人かな。エストレッラさんって言うの!」

友達がそう言い、あたしの耳にイヤホンをさす。そして音楽を再生した。途端に優しい声が耳に、心に響く。


僕は歌を歌うよ
笑顔をくれた君が泣いてるとき
ほんの少しだけでもいい
君の支えになりたい


心地よい低音に、あたしは一瞬にして虜になってしまった。涙があふれて止まなかった。そして、歌い手という世界に興味を持ってその日のうちに機材などを買って歌い手になろうって決めたんだ。

「エストレッラさんみたいに、人の心を動かせる歌い手になりたい!」

歌い手の有名な人はメジャーデビューしたり、CDを出したり、ライブをしたりしている。でも、あたしは有名にならなくてもいい。ただ、誰かに自分の歌声を聴いてほしい。そんな想いを込めて、初めて歌ったのは繰り返し一粒。


愛してた そう伝えたのは
釣り上げるためのエサですか
玩具箱の中 詰められて
飽きたら捨てられるんですか

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