仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
落ち込む優莉に数々の意地悪な冗談を言ったのも、本当は元気づけるため。ここへ住むようにしてくれたり、十万円もの大金をポンと貸してくれたりしたのもそう。並大抵の優しさでできる行為ではない。
高鳴る胸ごとぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。
優莉は、隼という人間を少し誤解していたのかもしれない。
「社長、本当にありがとうございます」
チンアナゴと一緒に頭を下げる。
「なんて顔してんだよ。ほら、食べるぞ」
たぶん今にも泣きそうな、情けない顔をしていたのだろう。隼はダイニングチェアに腰を下ろし、袋からサンドを取り出した。
「あ、では、お茶を淹れます。コーヒーの方がいいですか?」
ぬいぐるみをひとまずソファに置き、キッチンへ向かう。ところがコーヒーメーカーと電子ケトルはカウンターにあるものの、茶葉やコーヒー豆のありかを優莉は知らない。
「えーっと……」