仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
なにをどうしようかと迷っていると「コーヒー豆ならここだ」と、隼が優莉の両脇から棚に腕を伸ばす。抱き込まれるような体勢になり、優莉はその場で体を強張らせた。隼からふわりとシプレ系の爽やかな香りが漂い、ドキドキさせられる。
「俺がやるよ」
「いえ、私が」
パッと振り返ると、まだすぐそばにいた隼と近距離で目が合い息を飲む。スピードを上げていく鼓動がやけにうるさい。
まばたきもできずに数秒間見つめ合っていたが、隼から先に目を逸らした。
「俺が淹れるから、あっちに座ってな」
固まって身動きできずにいる優莉の頭をポンポン撫でる。まるで子どもをあやしているような感じだった。
「は、い……。よろしくお願いします」
なんとかそう言って、そそくさとダイニングチェアに腰を下ろした。
優莉が鼓動を宥めすかせているうちにコーヒーのいい香りが漂いはじめ、カップが目の前に置かれる。