仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「砂糖とミルクは?」
今朝は聞かれなかったが、スティックシュガーとミルクのポーションが細長いガラスの皿にのっていた。
「砂糖だけ……二本」
「二本!? そんなに入れるのか? 太るぞ」
「ふ、太るって! 普通、そんなこと女の子に言いますか?」
つい言い返す。甘いものは昔から大好物のため、自分でも〝太る〟という言葉には敏感なのだ。
ところが隼は不敵に笑う。
「残念ながら俺は普通じゃない」
「とにかく砂糖は二本なんです。そうじゃないと苦くて飲めないので」
「さすがお子様」
隼は口笛を〝ヒュー〟と上手に鳴らし、肩をすくめておどけた。そんな仕草さえ決まるのがとても癪だ。
「放っておいてください」
ぷりぷり怒ったため、うれしくて出そうになった涙が奥へ引っ込んだ。さっきの優しさはなんだったのか。感動するなんてうっかりミスもいいところだ。