仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
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その夜、買い物を終えて帰宅した優莉は、早速夕食の準備をはじめた。
食事を作ると豪語した以上、それなりのものを作らなければ格好がつかない。
隼が自炊をしたのはマンションに移り住んだ最初の一日だけで、それ以降は外で済ませてきたという。意気込んで買い込んだ調理道具は、ほとんどが使わずじまい。棚にしまったままだと。
隼の言っていた通り鍋やフライパン、おたまやフライ返しなど多くの道具は棚の奥にほぼ新品の状態で眠っていた。圧力鍋まで出てきて、いったいなにを作ろうと思ったのかと笑いが込み上げた。
今夜のメインディッシュはジューシーチキンの甘辛ソースがけ。副菜にはハニーマスタードのスパサラに水菜と油揚げの煮びたしだ。
父親が亡くなった後、母親は働かなくてはならなくなったため、家事全般は優莉の仕事だった。中学生のときからそうしてきたから料理はお手の物。上京してひとり暮らしをしていた大学生のときも、出費を抑えるために毎日自炊してきた。
とはいっても、自分ひとりのために作る料理と、誰かのために作る料理とでは気の持ちようが違う。隼の好みに合わなかったらどうしようかと不安を覚えるのも事実だった。
炊飯ジャーが炊き上がりを知らせてピピピと鳴ったとき、ちょうど隼が帰宅した。