仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「よかった。家族以外の人にあまり作ってあげた経験がないのでどうなのかなって心配だったんです」
「ほんとにうまいよ」
箸を進めるごとに褒められてくすぐったい。早速スパサラの小皿が空になる。
「それならあと少し残っているので、よかったらどうぞ」
「優莉は俺を太らせるつもりだろう」
唐突に呼び捨てにされて優莉の動きが止まる。
今朝はコンシェルジュの手前そうしたのだろうが、今夜は婚約者であるのを見せつける相手はいない。
「どうかしたのか?」
「あ、いえ、優莉って呼ばれたので……」
おかげで鼓動がドックンと大きく跳ねた。
「キミは俺の婚約者だろう」
「それは表向きというか」
今ここでは不要な設定だ。
「呼び慣れていないと、必要な場面で不自然になる」