仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

「おい、人聞きの悪いことを言うんじゃないぞ」


騙されてはいないが、後ろめたい関係ではある。なにしろ恋人なんて嘘なのだから。


「なぁ優莉」


隼が同意を求めながら、いきなり優莉の肩を引き寄せる。そのまま彼に抱きすくめられてしまった。

――ひゃあ!

突然の密着で隼の香りに包まれ、心臓が悲鳴を上げる。一気に顔が熱くなり、見る間に真っ赤になっていく。


「しゃ……は、隼さん、離してくださいっ」


社長と呼びそうになって急いで言いなおす。がっちりとホールドされて、カッコ悪くじたばたもがいた。ほかの人の前で恥ずかしい。


「隼さん、優莉さんが苦しがっているから離してあげて」


里帆に言われてようやく腕が解かれた。ふぅと息を吐いて体勢を整える。

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