仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
美穂はスーツのポケットからスマートフォンを取り出し、早速操作をはじめた。直後に隼のスマートフォンがデスクの上でヴヴヴと短く震える。
「ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
美穂はもう一度頭を下げ、今度こそ社長室を出ていった。
優莉が隼のマンションに同居するようになって二週間。彼女の手料理が楽しみで、隼は仕事をできる限り早く終わらせて帰るようになった。
それまで外食で適当に済ませていた隼には考えられない毎日だ。そのうえおいしいものに目がない彼女を喜ばせようとスイーツを手土産にしようとしているのだから、いったいどうなっているのか。
恋愛といえば、これまで受け身が大半でちやほやされるのが常。好意を寄せられて付き合うものの、自分から積極的に恋愛はしてこなかった。
そのせいか隼にまったく興味を示さない優莉は新鮮であり、心地よさすら感じている。
社会人一年目という若さでありながら、妹の学費の面倒をみているというしっかりした一面もある優莉。そんな彼女に、逆に隼の方が興味を引かれた。
最初はもの珍しかっただけ。ひと回り年下の彼女の保護者気分だった。