仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「わざわざ買ってきてくださったんですか?」
「ついでだ、ついで。そっち方面に行く用事があったから、思い出して寄ってきた」
ついでにしろ、買ってきてくれたことに違いはない。
「ありがとうございます。……あれ? 隼さんは食べないんですか?」
この頃は名前で呼ぶのにもすっかり慣れてきた。社長ではなく、すんなり名前が出てくる。
でも本社に異動になるのだから、会社で会ったときにはきちんと〝社長〟と呼ぶように気をつけなくてはならない。
「俺はいい。甘いものは得意じゃないからね」
会社の企画でデートをしたとき、水族館の後にいろいろと連れていってくれたパティスリーでも、隼は優莉がおいしそうに食べる様子を見ているだけだった。
「もうひとつあるから、後でまた食べるといい。なにか飲むか?」
「あ、自分で淹れます。隼さんもコーヒーいかがですか?」
「いや、俺が淹れるよ。優莉は食べてな」