仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
立ち上がりかけた優莉を制し、隼はキッチンに向かった。至れり尽くせりだ。
真っ赤なイチゴがふんだんにのったタルトは、見るからにおいしそう。コーヒーを待ちきれずに早速フォークで口に運ぶ。
「んー! おいしい!」
甘さ控えめのクリームにはバニラビーンズのいい香りがして、それが鼻から抜けていく。
やっぱりおいしいものは幸せ。最強の正義だ。
優莉がふた口目を頬張ったとき、隼が目の前にコーヒーを置いた。シュガーが二本用意されている心遣いがうれしい。
「ありがとうございまふ」
口をモゴモゴさせながらペコッと頭を下げると、隼が優莉を見てクスッと笑った。
なんだろう?と思いつつタルトを飲み込んで彼を見上げる。
「クリームがついてるぞ」
微笑みながら隼の手が優莉の頬に伸び、一瞬のうちに視界が遮られる。優莉が目を丸く見開いたそのとき、唇の端を彼にペロッと舐められた。