仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「ん、俺はこっちのがうまいな」
隼は腰を屈めたまま、いたずらに笑った。
突然の事態にまばたきもできないまま体がフリーズする。なにが起こったのか頭で処理ができず、後から思い出したかのように心臓がドクドクと脈を打ってきた。
「な、な……」
それ以上、声が出ない。鯉のようにパクパクと口だけを動かす。気が動転して、なにが起きたのかさっぱりわからない。唇を重ねていないからキスとは呼べないかもしれないが、端とはいえ微かに触れたのは事実。
「優莉?」
身動きを取れなくなった優莉の顔の前で隼がひらひらと手を振る。
「……あ、の……今のは……?」
声が情けなく震えた。
「クリームがついてたから」
「そう、ですか。……すみません」