仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
今の、なに……?
たしかに触れ合った唇はまだ熱をもっていて、キスが錯覚ではないと主張してくる。心臓が暴れて、大太鼓のような音が耳の奥に響いた。
一度逃げた手前のこのことバスルームから出ていけず、優莉はそのままシャワーを浴びてゆっくりバスタブで体を温めてから出た。
そうしてもキスをした余韻は消えず、どうしたらいいのか途方に暮れる。隼を避けてそそくさとベッドルームに逃げたが、彼もここに寝るのだからいずれはやって来る。
なによりもどんな顔をして、どんな反応をしたらいいのかわからず、優莉は頭を悩ませていた。
それならば彼がここへ来る前に眠ってしまおう。
そう考えて電気を消してベッドに入る。チンアナゴを抱きしめて、彼が横になる方に背を向けた。
ところがキスのせいで目はらんらん。アドレナリンが出ているのか、眠気は一向に訪れない。
――もうっ、隼さんのバカ! なんでキスなんてしたの!?
心の中で悪態をつくと、余計に眠れなくなるときた。
寝返りも打てずに優莉が悶々としていると、しばらくしてドアが開かれたため身をすくめる。眠っているふりをしようと、寝息を装ってゆっくり呼吸をした。