仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
今メンバー総出で取り掛かっているのが、約一ヶ月後の三月にオープンする店の準備だそうだ。
マーケットの分析や店舗の図面などをパソコンで見せてもらい、一から造り上げていく仕事は非常に興味深かった。店のスタッフとして働いていたら、まったく見えない部分だ。
午前中はそうして過ぎ、あっという間にお昼になる。
真っ先に一緒に行こうと誘ってきた門倉とふたりで財布片手に事業部を出る。
クールブロンの本社には休憩室があるが、社員食堂はない。そのためお弁当を持参するか、外食をするかのどちらかだ。
今日は初日でどうなるかわからなかったため、門倉も優莉もお弁当を用意していない。とりあえず外に出れば、なにかしら食べられるだろうとなり、エレベーターを並んで待った。
ふと視線の隅になにかを捕らえ、つられるようにして目を向けると、通路の先に隼の姿があった。なぜか胸がドクンと音を立てる。
マンションでは何度もスーツ姿の彼を見ているのに、オフィスで見ると格段に見違えるから不思議だ。いつも以上に素敵に見える。
隣を歩いているスタイル抜群の美女は秘書だろうか。二十二歳の優莉とは一線を画した大人の女性である。
隼の隣にいて自然なのは、ああいった女性だろう。そう思わずにはいられず、胸の奥がチクチクする。
……やだ、なんで胸が痛いの。