仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「あ、僕のことは気にしないでください。黒子に徹しますので」
「そう言われても……!」
気にしないでいる方が無理だ。
「おふたりはどうぞデートを楽しんでください」
よくそんなふうに言えるものだ。遠くからこっそりならまだしも、こんな近距離で撮影されて普通に振る舞えるわけがない。
しかも、その様子を社内報に掲載するなんて、いったいなんの罰ゲームなのだ。これが特別賞だというのだから、優莉のくじ運はやはり悪いと言うしかないだろう。
「宇賀さん、撮影をいったん止めて」
隼は車を路肩に止め、ハザードランプをつけた。
「はい、承知いたしました」
隼が左手で宇賀を静かに制し、素直に従った彼がカメラを下ろす。
「花崎さん」
「は、はいっ」