仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
不意に隼から呼びかけられ、優莉はシートで背筋が伸び声は裏返った。
そんな優莉を気にも留めず、彼が続ける。
「とりあえずデートはしなければいけないそうだ。会社で公に出された賞だからね。でも俺も忙しい身だから、それほど時間はとれない。そのへんは悪く思わないでほしい」
言葉の端々から嫌々ここへ来たのがわかる。義務感が漂っていた。
抽選会の賞品として出された以上、デートをしないわけにはいかないのだろう。
これは優莉の勝手な想像に過ぎないけれど、運営事務局から無理やりお願いされ、渋々引き受けたから気が乗らないのではないか。恋人がいるとしたら、なおさらそうだろう。
「それなら私もちゃちゃっと済ませていただいて大丈夫です」
むしろその方が好都合。隼と同じく優莉も義務感を抱いているのだから。
「え?」
隼の目が点になる。