仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

同居が決まったときに書いた申請用紙で、誕生日の話題になったのは一度きり。それを仕事で忙しい隼が覚えているとは思ってもみなかった。


「あたり前だ」
「あ、バレンタインデーと同じだから印象に残りやすいですもんね」


ほかの日だったら、きっととっくに忘れ去られているはずだ。
今までさんざん影の薄い誕生日を迎えてきたが、今日ほどバレンタインデーと同じでよかったと思った日はない。


「べつにバレンタインだからどうこうじゃないけどな」


それならどうしてと聞く勇気はない。突っ込んで探ったって惑わされるだけだ。


「ありがとうございます」


なんにせよ感謝の言葉以外にない。


「おいしいものを食べに行こう」


そう言われると俄然気持ちがハッピーになる。

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