仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「この店は都内にもあるんだけど、相当な人気でね。ここはオーベルジュだから泊まるのも可能なんだ」
「そうなんですか」
そんな店にわざわざ連れてきてくれた特別感はうれしいものの、優莉は素直に喜べない。同居するために偽りの婚約者にしてもらったのはありがたい。でも、彼の母親にまで嘘をつく理由も、キスの理由もわからないから。
ここ数日の隼の言動が不可解すぎて、優莉は処理しきれずにいた。
アペリティフを尋ねられ、ふたり揃ってスパークリングウォーターにしてもらう。隼は車の運転があるし、優莉はもともとお酒があまり得意ではない。
「優莉、二十三歳の誕生日おめでとう」
グラスを持ち上げて、隼が優しく微笑む。
「ありがとうございます」
サプライズで祝ってもらい、なんともいえず照れ臭い。
「これでひと回りの年の差じゃなくなるな」
「ほんの二週間ですけどね」