仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「実験台?」
思わず笑みがこぼれる。実験台とは心穏やかではない。
「こっちとこっち、どっちの味付けがいいかとか、父さんとふたりでさんざん食べさせられたよ」
「そうなんですね」
底抜けに明るい佳乃とのやり取りを勝手に想像して、優莉まで楽しくなる。
「お父様はどんなお仕事をされてるんですか?」
「銀行マンだったけど定年して、今は家でのんびり」
隼が三十四歳だから、現役を引退していてもおかしくない年齢だ。
「そういえば優莉のお父さんは? 幼い頃に亡くなったって言ってたけど、なにをされていたの?」
「じつはフレンチレストランのシェフだったんです」
「えっ? そうなのか!」
隼の目が丸く大きくなる。