仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
とはいえ、社長などという大それた人と一緒になにをしたらいいのやら。社会人一年目の優莉には見当もつかない。
強いて言うならば……。
「おいしいもの」
「え?」
「おいしいものが食べたいです」
それに尽きる。おいしいものはなによりの幸せだから。
でも、そう言ってから不適切なリクエストだったかもしれないと不安になる。フレンチレストランを経営する社長を相手に、口にしていい要望ではないだろう。おいしいものが食べたければ、クールブロンへ行けと。
ところが優莉の心配をよそに、隼の横顔に笑みが浮かぶ。
「よし、任せておけ」
頼もしい言葉を聞き、優莉はひとまずホッとした。