仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


隼はどこか得意げに言うと「よし、行こう」と入園ゲートを親指で差して歩きだした。

その背中を追いかけながらチラッと振り返ると、カメラを構えた宇賀も当然ながらついてきた。ここへ到着するまでの車の中では、ひっきりなしにシャッター音が聞こえていたため優莉の体は強張ったまま。おかげで隼から話しかけられても、ぎこちない受け答えしかできなかった。

これがずっと続くのかと思うと気が重いが、きっとここでなにかを食べたらそれで解散だろう。それまでの我慢だ。

優莉は自分にそう言い聞かせ、チケットを購入した隼に続いてゲートを抜けた。

一月中旬で風は冷たいが、日差しのせいか穏やかだ。
晴れた日曜日だけあって人の出は多い。家族連れはもちろんカップルの姿があちこちにあり、少し羨ましくもある。

隼は、水族館の大きな建物を横目にずんずん足を進めていく。足が長いだけあり、彼の歩くスピードの速さといったらない。置いていかれないように優莉は必死だ。デートというよりは追いかけっこといった方が正しい。
そのうしろの宇賀も、足をもつれさせながらついてきた。

ベビーピンクのワゴン車の前で隼がようやく立ち止まる。風にはためくのぼりには〝クラブハウスサンド〟とあった。地面に立てかけられた黒板には手書きのメニューがあり、ポップ体の文字にセンスを感じる。

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