仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
話がぐるりと変わり、優莉はすぐに反応できずにもたつく。自分で話題を変えたかったくせにこれだ。脳内が花畑だと言われないようにしなくては。
「え? 本社で噂になってない? うちのシェフが何人か辞めてるって話」
「そうなの?」
少なくとも優莉の耳には入ってきていない。店に関する情報を掴むのは、意外と本社よりも店の方が早いのかもしれない。
「自由が丘も?」
「あ、ううん。うちは辞めてないけど。どこかの引き抜きなんじゃないかって噂が立ってるよ」
「引き抜き?」
業界では珍しくないのかもしれないが、クールブロンでもそんな話が出るとは想像していなかった。比較的働きやすく、それ相応の報酬ももらっていると、店にいたときにシェフが話していたからだ。
「実際はどうなのか知らないけどね。噂ではそうだよ」
いきなり辞められては店の運営も大変だろう。新しい店のオープン控えているからなおさらだ。
ただでさえ忙しい隼がその対応に追われなければいいなと考えながら、優莉は明日美との久しぶりの時間を楽しんだ。