仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
突然声をかけられ、手を止めて見上げる。
するとそこにはダークグレーの三つ揃いのスーツを着た、長身の男が立っていた。男性にしては長めの髪をうしろで束ね、大きな目で優莉たちを見下ろす。その視線はどこか攻撃的で、隼をじっと見据えていた。
「うちに食事に来てくれるなんて光栄ですよ」
この店のオーナーなのか、隼の知り合いでもあるようだ。
「高村、久しぶりだな」
「えぇーっと前の会社を霧生が辞めたとき以来だから、六年ぶりくらいになるのか」
「そうだな。まさか高村がこっちに来るとはね。関西から関東に進出?」
「だね。クールブロンを潰そうと思って意気揚々とね」
潰すなどと穏やかでないワードが飛び出した。冗談で言い合っているような感じはなく、ふたりの間にただならぬ空気が舞い降りる。
優莉はそれに気圧されて膝の上に両手を揃え、なんとなくふたりから遠ざかった。
「で、どうだい? うちの料理のお味は」
「残念だな。話にならない」