仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
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忙しない毎日が息つく間もなく過ぎていく。
オープンに向けた準備は順調に進んでいるが、相変わらずシェフは決まっておらず、隼が帰国する気配もない。このままシェフ不在であればオープンは延期にするしかないだろうという意見が、事業部内ではちらほらあがっていた。
隼からの連絡はまめにあるものの、フランスでどんな状況なのか今ひとつ詳細はつかめないままである。
もしもそのシェフが前回みたいな条件を出してきたら……? 恋人として連れ帰ってきたらどうしよう。
高村や門倉の話していた内容が優莉の不安を煽って居ても立ってもいられなくなるが、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせていた。
待ち焦がれた隼から帰国するという連絡がきたのは、いよいよオープンを三日後に控えた夜だった。例のシェフを口説き落としたと、その声はとても弾んでいた。
これでなんとかオープンは迎えられるだろう。
事業部のみんながホッとする中、優莉ひとりだけ複雑な心境を抱えていた。
電話のたびに『早く優莉に会いたい』と言ってくれた隼を信じる以外にないが、何日も離れていると不安も想いも募るもの。とにかく彼の顔を早く見て安心したかった。