仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

本社に戻る。つまり、ここにはいないでくれと言いたいのだろう。お客とのいざこざを起こした店員は不要だと。
足もとからすくわれるような寂しさがせり上がる。

優莉は、大事なときに大変なミスをしてしまったのだ。

ふたりが奥へ消えると、店内が少しずつ平穏を取り戻していく。ただひとり、優莉だけがそこから立ちなおれずにいた。


「花崎さん、大丈夫か?」


門倉に声をかけられてもなにも返せない。


「社長もああ言ってるし、本社に戻っていた方がいいんじゃないか?」


門倉まで、優莉にはこの場にいてほしくないと言う。
ほかのスタッフからも同じような気配を感じ取り、優莉は素直にそれに従う以外になかった。

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