仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

「最近、うちの店で異物混入を訴えられる事案が多発しておりましてね。いろいろと調査をしておりました」


隼はテーブルの上に手を組み、男をじっと見据えた。

同一人物の可能性が高いと判断した隼は、そのクレームのあった店舗で男の顔を覚えているスタッフをべつの店に配置し、姿を現すのを待ったのだ。長丁場も想定していたが、案外早く訪れるあたりは〝相手〟の焦りを感じずにはいられない。

男が店に現れた際に写真に収めておき、その後は注意深く観察。結果、男は髪の毛の混入や虫の混入というクレームを作り上げ、店に難癖をつけていたと判明したのだ。
オープンした店にも近いうちに現れるだろうと警戒していた矢先の今日である。


「ミニョンミネットの榊原(さかきばら)さん」


不意打ちで名前を呼ぶと、男はこぼれ落ちそうなほどに目をカッと開いた。


「身元も判明していますよ」


調査会社に依頼し、隼がフランスに行っている間に男のリサーチを行っていた。ミニョンミネットは隼をライバル視する高村の店だ。

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