仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
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食事を終えて佳乃を見送り、ふたり並んで後片づけをする。夕食後にこうして一緒に皿を洗う時間が、優莉は何気に好きだ。せっかくあるのだから食洗機に入れれば楽なのはわかっていても、なんとなく使わずにいる。
「優莉、悪かったな、母さんが余計なことを」
「大丈夫です。婚約者って嘘をついたままですもん。気になってあたり前ですから」
自分にも言い聞かせるつもりで言う。
結婚したいと思っているのは隼に知られない方がいい。重い女だと思われたくはないから。ひと回りも年下だから、まさか優莉が結婚を望んでいるなんて思わないだろう。
「優莉、そのことだけど」
「ほんとに大丈夫です。結婚なんて考えられないですもんね」
隼の先回りをして言う。洗剤を追加投入してスポンジを泡立てた。
「優莉、こっち向いて」
言われるままに向くと、隼がふっと笑みを漏らす。