仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「泡、飛んでる」
「え? どこですか?」
顔を突き出すと、隼は濡れた手をタオルで拭いてから「ここ」と頬を撫でそのまま触れるだけのキスをした。不意打ちだったため、なんとなく照れ臭い。
「本物の婚約者になろうか」
「……え?」
本物って……。
鼓動が密かに、そして着実に高鳴っていく。
「優莉、結婚しよう」
自分ひとりだけ時間が止まったような感覚に包まれる。隼の口からその言葉が出てくるとは思いもしていなかった。
「……あ、あの」
急に言葉が不自由になったみたいに話せなくなる。口を動かしているのに声にならない。イエスが喉の奥に張りついた。
「優莉の年齢はわかってる。今すぐ結婚を考えられないのも承知のうえだ。でも、俺は優莉と結婚したい」