仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


◇◇◇◇◇

午後五時に訪れた取引先を見送り、隼が社長室のデスクに座ると同時にドアが勢いよく開く。


「社長! ご結婚されるって本当ですか!?」


入ってきたのは総務部の宇賀だった。よほど取り乱しているのかノックもなければ、秘書の美穂を通すでもない。


「あっ、すみません。森尾さんがいらっしゃらなかったので」


我に返ったようにハッとして頭を掻く。
彼女は来客時に出していたコーヒーカップを片づけて給湯室だ。

隼は自分の唇に人差し指をあて、そっとソファを指差した。静かにするように目で訴える。
宇賀は「ですよね。失礼しました」とペコペコしながらソファに座った。


「で、本当なんですか?」


ぐいと近づけた顔は真剣そのものだ。
宇賀はおそらく人事部長の大久保から聞いたのだろう。社内で公にするのなら社内報で発表してはどうかと提案したのは大久保だ。
発表の仕方としては隼もそれに賛成だった。

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