仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
立ち止まり振り返った優莉は言葉も出ないほどだった。
「社長、どうしたんですか?」
門倉がそう尋ね、何人かは「今、〝優莉〟って呼ばなかった?」とコソコソし合う。
「彼女を迎えにね」
「彼女って……」
みんなの視線が優莉に向く。
優莉は「えっ、あ、あの……」と言ったまま固まった。どう反応したらいいのかわからず、完全に思考回路が停止した様子だ。
「驚かせて申し訳ないが、彼女とは近々結婚する予定なんだ」
車を降りて優莉を引き留めた以上、もう黙ってはいられないだろう。嫉妬に乗せられしゃしゃり出てきてしまったが、かえっていい機会だ。暴露すれば、会社でも堂々としていられる。
隼はむしろ晴れ晴れとした気持ちだった。
みんなは口をぽかんと開けたまま、数秒間放心状態になる。真っ先に反応したのは優莉だった。