仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「そう。で、気づいたら車を降りて優莉を呼び止めてた」
自分を制御できないほどの感情に動かされたのははじめてと言ってもいい。優莉が親しげにほかの男としゃべっていただけで、こんな状態になるとは思いもしなかった。
「……うそみたい」
なぜかうれしそうに両手を前に組み、キラキラした目で隼を見る。
「隼さんがヤキモチをやいてくれるなんて」
連呼されるとカッコ悪さが増していく気がする。耳がやけに熱い。
優莉は助手席から隼に抱きついた。
「おいっ」
「うれしすぎてもうっ」
なんだかわからないが、嫉妬されてうれしいらしい。ぎゅっとしがみつく優莉を隼もしっかり抱きとめた。
隼自身、そんな感情とは無縁だった。そこまで強く誰かを想う経験がなかったのだと気づいたのは、優莉を好きになってから。それまで人に執着するなんて考えられなかった。