仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


「今度はここで記念撮影しましょう」
「え? またですか?」


黒子に徹すると言っていたのは戯言だったのか。
隼は肩をすくめて両手を広げる仕草をした。外国人チックなジェスチャーがよく似合う。


「はいはい、そこに並んでください」


ほかのお客を整理して、宇賀がふたりを立たせる。大きな水槽をバックにして二度目の記念撮影。「肩を抱け」だの「恋人っぽく」などと無茶振りも先ほど同様だった。

順路に従って進んでいくと、自然の海を再現した巨大な水槽の前にやって来た。


「うわぁ、すごーい」


水槽の深さも広さも半端がない。これまで見てきた小さな魚ではなく、いろんな種類のエイが空を飛ぶように泳いでいる。太陽の光が水中深くまで伸び、キラキラと輝いて美しい。


「社長はあまり興味がないですか?」


さっきから淡々としているし反応が薄い。それともしょっちゅうデートで来ていて飽き飽きしているのか。
水槽にへばりついたまま、優莉が隼に振り返る。

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