仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


――手! 手がつながれてる!

もしかしたら高校時代の体育祭のフォークダンス以来ではないだろうか。自分とは違う体温が容赦なく優莉の鼓動を弾ませる。


「ちょっ、社長!?」


優莉がそう叫ぶのと、宇賀が「どこ行くんですかぁ!」と叫ぶのとが同時だった。


「宇賀を巻くぞ」
「巻くって?」
「いちいち撮影されて面倒くさいだろう? ほら走れ走れ!」
「えぇ!?」


人混みを器用にすり抜け、隼にぐいぐい引っ張られる。途中、人とぶつかりそうになるたびに「すみません!」と謝りながら懸命に走った。

歩くのでさえ速い隼は、走るのも当然ながら速い。どちらかと言えばかけっこは得意な優莉でも、忍者のごとき身のこなしも必要となると話はべつ。


「しゃ……ちょう……まっ……!」


言葉にすらならない。
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