仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「俺よりひと回りも若いくせに情けないぞー」
もしかして年の差が悔しくて、わざと走らせているのではないかと勘繰りたくなる。体力に自信があるのか、息の上がった優莉に反して隼は余裕綽々だ。
何事かと目を見張る人たちの向こうから聞こえる宇賀の声が次第に小さくなり、距離が開いたのを実感する。さらに走り続けると、完全に聞こえなくなった。
「しゃ、も……いい……でしょ……」
切れ切れの息でなんとか呼びかける。足も呼吸も限界だ。
館内を一気に駆け抜け、広い通路に出たあたりで隼はようやく足を止めた。
肩で大きく息をして酸素をめいっぱい肺に送り込む。その場に座り込みたいくらいにヘトヘトだ。膝に両手を突いて体を屈める。
対して隼ときたら、呼吸も大して弾んでいない。
「二十二歳の若者が情けないな」
腕組みをして勝ち誇ったようなのが小癪だ。
「……だって、いきなり……走り……だすん、ですもん」