仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
いくらなんでもそこまで子どもではない。
優莉が頬を膨らませて抗議すると、隼は楽しそうに笑った。
その後、追っ手の宇賀に見つからずにイルカやアシカのショーを楽しみ、そろそろ出ようかと出入口へ向かう。余裕の表情だった隼も実は走って疲れているのか、駐車場に着いた頃に比べると歩くスピードが緩やかだ。
途中マリンショップを見つけ、優莉はついふらりと吸い寄せられた。大きなぬいぐるみが目に入ったのだ。
壁一面に並んだ大小様々なぬいぐるみの中で優莉の興味を引いたのは、一メートルはありそうなチンアナゴのぬいぐるみだった。
「かわいい」
白地に黒いぶち模様。手触りもよくて気持ちがいい。優莉が撫でまわしていると、それが両手からスルッと抜かれた。隼が取り上げたのだ。
「そんなに気に入ったのなら買ったらいい。走らせたお詫びにプレゼントするよ」
「えっ! そんなの大丈夫ですから!」
あざとくおねだりしたみたいだ。走ったのはたしかに疲れたけれど、記念撮影が嫌だったのは優莉も同じ。
手を伸ばしたが、隼はそれを高く持ち上げて届かないようにした。ぴょんと飛んでもかすりもしない。