仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「おっと見つかったか」
突然、隼が真顔になる。視線の先をたどっていくと、宇賀の姿が遠くに見えた。
優莉たちに気づき「あー! 待ってくださいよー!」と片手をあげる。
「やばい。行くぞ」
「またですか!?」
隼は優莉からチンアナゴを取り上げて小脇に抱えると、再び手を取って走りだした。大きなものを抱えているため、さっきのようにぐんぐん進めないのがもどかしい。
疲れがぶり返して優莉の足が重くなっているのも要因だろう。これで本当に隼よりも十二歳若いのかと自分でも疑いたくなる。
でも追っ手の宇賀も疲れは同様。差は広がらないが、縮まりもしない。
ふたりは駐車場まで一気に駆け抜け、車に飛び込むように乗った。チンアナゴが後部座席にゴロンと転がる。
「置いていっちゃうんですか?」
肩で息をしながら尋ねると、隼は「もちろん」と平然と答えた。