仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「取り急ぎ、そのご報告でした。ひとまずスーシェフで回っていますので、次のシェフ候補が見つかるまではそれでいこうと考えています」
「わかった。またなにかあったら報告をよろしく」
「それからもう一点」
大久保の顔がにわかに曇る。なにかほかにも悪い報告がある顔だ。
「ここ最近、各店で妙なクレームが頻発しております」
「妙なクレーム?」
「はい。料理に髪の毛や小さな虫が混入していると」
異物混入はあってはならないが、まったくゼロにできないのが実情である。厨房に入る前にエアカーテンを通ったり、粘着ローラーで全身のゴミをくまなく吸着したり、髪を束ねたりしても、完全に防げるものではない。無農薬野菜を使用しているため、洗浄が不十分であると小さな虫が混入する可能性もあるだろう。
ただ、頻発となると話はべつだ。
「衛生面に不備は?」
「細心の注意を払っています。……じつは気になる点がありまして」
大久保はそう言って神妙そうな面持ちになった。