仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「先ほど、自由が丘店の花崎さんからお電話がありました」
「花崎さん? ……あぁ彼女か」
すぐにはピンとこなかったが、それが誰であるかすぐに思い出した。昨日の企画デートの相手だ。
「昨日はありがとうございましたというお礼でした」
「そうか」
ソファに深く腰を下ろし足を組み替えた。
ふたりで走って逃げだしたことを思い返し、顔が綻ぶ。直接話せなかったことを少なからず残念に思う自分がいた。
ひと回りも年下を相手にして声が聞きたかったなんておかしいだろ。
急いで自分の気持ちを否定する。
「それから、総務部の宇賀さんが少しお時間をいただけないかと」
美穂のうしろから、首を伸ばして社長室内を覗く宇賀の顔が見えた。用件は聞かなくてもわかる。昨日の件に違いない。
「いいよ。通して」