仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~
「そんなものはない」
隼は手をひらりと振って否定した。
「水族館を出た後、彼女をアパートまで送り届けて終わりだよ」
パティスリーを何軒かはしごしたのは言わずにおいた。それも取材したかったのにと不満を言われたらかなわない。
「そうですか」
納得したのかしないのか定かではないが、宇賀は一拍おいてさらに続けた。
「だけど社長、とても楽しんでいらっしゃいましたよね」
「そうか?」
隼自身もその自覚はあったが、とぼけて聞き返した。面倒なだけだと思っていた企画が、思いのほか楽しかったのだ。
ひと回りも年下のせいか、小学校の先生気分というか保護者気分というか。まるで子どものように笑ったり怒ったり、くるくる表情を変える優莉は一緒にいて飽きなかった。