仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~

◇◇◇◇◇

その夜、出勤してきたアルバイトに仕事を引き継ぎ、優莉が明日美と店を出たのは八時を回った頃だった。

乾燥して冷えた空気が頬を刺す。暖かい店から出たせいか、寒さが余計身に染みる。首に巻いていたマフラーを口もとまで上げ、駅に向かって歩きだした。

夕食には店でまかない飯が出され、お腹は十分に満たされている。レストラン勤務はこれがあるからたまらない。優莉にはなによりの福利厚生だ。
今夜のまかない飯は、ご飯も一緒にくるんだロールキャベツだった。トマトベースのスープに野菜のうま味がじんわりと出て濃厚。明日もまたがんばろうと思える一品だ。

本当においしかったなぁと思い出していると、明日美から早速質問責めにされた。


「それでどうだったのよ、デートは。どこに行ったの? なにした? 社長、どんな感じだった?」
「そんなにいっぺんに聞かれても」


優莉がクスクス笑うと、明日美は「だって全世界の女子憧れの霧生社長とのデートだよ? 気になるじゃない」と頬を膨らませる。

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