仮面花嫁~極上社長は偽り妻を乱したい~


「やだ、つないだの!?」


聞いておいて驚かないでほしい。


「ま、まさか! つ、つないでないよっ」


ここで正直に話したら、リード同然とはいえ明日美は興奮して悲鳴をあげるだろう。そんな事態は避けたい。


「えー? ほんとにー?」


目を細めた明日美が追究するように顔を覗き込む。


「ほ、ほんとだってば」


頬が熱いのは、冷たい空気に反発して血流が巡っているから。隼とつないだ手の感触が一瞬だけ蘇ったせいでは決してない。


「社内報が出ればわかるからっ」


何枚か撮影したぎこちないふたりの写真を見れば、デートとは程遠いものだったとわかるだろう。父と娘。――いやさすがにそれは厳しいにしても、教師と生徒だとか。事実、彼には何度か小学生だとからかわれたくらいだ。

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